通知を切ったスマートフォンを伏せて置いても、つい手を伸ばしてしまう。ポケットへ入れても存在が気になる。そんな人のために職場で集中作業の時間を設けるなら、端末の設定だけでなく、置き場所を変える方法があります。
ただし、スマートフォンを別の場所へ置けば誰でも仕事が速くなる、とまではいえません。この記事では、大学生を対象にした実験で分かっている範囲と限界を確認したうえで、15人以下の職場が本人参加型の一時保管を試す条件を考えます。候補にするのは、15人用ダイヤル式モバイルロッカー
です。
実験では机上・ポケットやバッグ・別室を比べている
2017年に『Journal of the Association for Consumer Research』へ掲載された研究は、本人のスマートフォンが近くにあるだけでも、認知課題に使える能力へ影響するかを二つの実験で調べました。
実験1は大学生548人を募集し、条件に合わないデータを除いたスマートフォン利用者520人を分析しています。参加者は、自分の端末を「机上」「ポケットまたはバッグ」「別室」のいずれかへ置く条件に無作為に割り当てられました。着信音と振動は全条件で切り、作業記憶容量と流動性知能に関する課題へ取り組みました。
二つの課題を合わせた分析では、別室条件の成績が机上条件より高く、端末の置き場所が机上からポケット・バッグ、別室へ離れる方向にも線形傾向が示されました。一方、ポケット・バッグ条件は、机上条件、別室条件のどちらとも有意差がありませんでした。
実験2は大学生296人を募集し、除外後の275人を分析しています。三つの置き場所に電源のオン・オフを組み合わせた結果、置き場所は作業記憶課題へ影響しましたが、持続的注意を測る課題では置き場所や電源による効果が示されませんでした。
この研究が直接示したのは、統制された実験室で大学生が認知課題へ取り組んだ結果です。一般の就業者による日々の仕事、成果物の質、長期間の生産性を調べたものではありません。また、ロッカーや施錠に効果があると検証した研究でもありません。
職場では「予告した短時間の分離」として試す
研究の著者らは、参加者が端末から離れることを予期しており、応答できない着信音を聞く状況でもなかった点に触れています。そのうえで、時間を定めて守られた分離には可能性があると考察しています。
今回の職場へ当てはめるなら、会社が一日中端末を回収する運用ではなく、本人が参加する集中時間だけ、スマートフォンを机から離れた共用場所へ移す試行が考えられます。研究の別室条件を完全に再現するものではありませんが、少なくとも机上で伏せる方法と、手元から離す方法を分けて試せます。
最初に、スマートフォンを使わずに完結できる作業を選びます。業務連絡、電話、多要素認証、撮影などに端末が必要な時間は対象にしません。開始前に終了時刻と緊急連絡の受け口を決め、終了後は本人が端末を回収します。
ロッカーは、集中を高める装置ではありません。複数人の端末を重ねず、決めた時間だけ手元から離すための置き場所です。導入後も効果を断定せず、同じ種類の作業で「机上に置く日」と「共用場所へ移す日」を試し、作業の中断回数や予定範囲を終えられたかを本人が記録すると、職場に合うか判断しやすくなります。
端末を取り出す条件を、開始前に決める
集中時間の途中で端末が必要になったとき、取り出すこと自体を失敗扱いにすると運用が続きません。業務連絡への応答、多要素認証、予定していなかった撮影など、作業上必要になった場合は本人が取り出し、利用後に試行へ戻るか、その回を終えるかを決めます。目的は端末の利用を禁止することではなく、端末を使わない作業中の置き場所を分けることです。
一方、「念のため確認する」という理由で出し入れが繰り返されるなら、ロッカーの位置だけでなく、集中時間中の連絡を誰が受けるか、終了時刻をどこで確認するかを見直します。端末の時計やタイマーに頼る運用では、確認のたびに扉を開けることになります。室内の時計やパソコン側の通知など、作業に使う機器で終了を把握できる状態も試行へ含めます。
固定区画と空き区画方式では、開始手順が異なる
利用者ごとに区画を固定する方式なら、迷わず収納しやすい反面、不参加者の区画が空いても別の人が使うルールを別途決める必要があります。空いている区画を毎回選ぶ方式なら、参加者の入れ替わりには対応しやすいものの、使用中の区画と自分が選んだ番号を本人が取り違えずに管理できることが条件です。
候補商品の半透明扉は、販売ページでは収納物を確認しやすい特徴として案内されていますが、それだけで使用中の持ち主は判別できません。氏名を扉へ常時表示する前提にせず、固定区画なら社内で使っている座席や担当との対応、空き区画方式なら本人だけが回収先を確認できる方法を試します。どちらも無理なく再現できない場合は、区画数が足りていても共用運用には向きません。
ロッカー選びは距離、人数、端末寸法から始める
商品を選ぶ前に、次の三つを職場側で決めます。
手を伸ばして取れない場所を決める
研究の別室条件から、そのまま「何m離せばよい」という基準は取り出せません。職場では距離を数値で決めるより、着席したまま手が届かず、通常の視野にも入り続けない場所を候補にします。執務机の端や各席のすぐ後ろでは、机から物理的に離すという今回の運用を作りにくくなります。
一方、取りに行く動作がほかの人の作業を中断する場所も避けます。集中時間の開始と終了に利用者が集まることを想定し、執務席とは分かれていても、本人が決めた時刻に出し入れできる共用棚やカウンターを探します。
在籍者数ではなく同時参加者を数える
必要な区画数は、会社全体の人数ではなく、一回の集中時間へ同時に参加する最大人数です。営業担当が外出している時間に内勤者だけで試すなら、その参加者だけを数えます。
区画を共用する場合は、前の人が回収する時刻と次の人が預ける時刻を重ねません。固定の持ち主を決める場合は、欠勤者の区画を別の人へ一時的に渡すかどうかも先に統一します。利用のたびに割り当てが変わるなら、氏名ではなく区画番号で確認する方法が適しています。
ケースを付けたまま三方向を測る
測るのは端末本体のカタログ寸法ではなく、普段のケース、背面リング、ストラップなどを含む幅・奥行・厚みです。イヤホンや社員証も一緒に入れる予定なら、重ねた状態ではなく、扉を閉める向きに並べて測ります。
集中時間中に充電する前提は置きません。紹介する商品ページには充電用の配線口や電源の仕様が示されていないためです。充電が必要なら、充電機能を確認できる別の商品種別を検討します。
15人用ダイヤル式モバイルロッカーの仕様
商品ページで確認できる主な仕様は次のとおりです。
- 収納数: 5列3段、15区画
- 外寸: 幅770×奥行265×高さ290mm
- 扉内有効寸法: 幅125×奥行220×高さ55mm
- 重量: 12.5kg
- 本体材質: スチール
- 扉材質: PS
- 収納スペース底: EVA
- 錠タイプ: ダイヤル錠
- 扉: 半透明
- 付属品: 番号検索プレート1本
- 組み立て: 完成品
この商品は、端末を人数別の区画へ分け、物理鍵を毎回配らずに本人が出し入れする候補になります。半透明扉は空き区画を見分ける材料になりますが、収納物の見え方は商品画像と実物で確かめる必要があります。
収納予定の中で最も大きい端末を用意し、ケース込みの三方向が扉内へ収まるかを照合します。数値だけでは、扉を閉めるときの干渉や付属品の収まり方までは分かりません。導入前に販売元へ実物確認の方法を問い合わせるか、一台で試せる場合は一つの区画へ実際に入れて確認します。
幅770mmの本体より大きい設置面で試す
本体を置く面は、公称外寸と同じ輪郭だけで決めません。扉を操作する手元と、集中時間の前後に複数人が順番に立つ場所が必要です。
設置候補へ本体の輪郭をテープで示し、その前で一人が中央列、端の列、下段を操作する動きを再現します。もう一人が待っても執務席への出入りを遮らないかも確認します。本体を高い棚へ置く場合は下段の見え方が変わり、低い台へ置く場合は上段まで含めてかがむ動作が増えるため、15区画すべてを操作して置き台の高さを決めます。
商品ページで確認できる本体重量は、持ち上げやすさや固定可否を直接示す数値ではありません。置き台がこの商品と収納物を載せられるか、滑りやずれを抑える設置方法が用意されているかは、置き台の仕様と販売元の説明を別に確認します。
ダイヤル番号を忘れた場合まで一回通して試す
商品ページにはダイヤル錠と番号検索プレートの付属が示されていますが、番号設定、利用後のリセット、番号を忘れた場合の詳しい操作までは掲載情報だけで判断できません。購入前に取扱説明書または販売元へ確認します。
試行では、利用者役が空き区画を選び、端末を入れ、施錠し、集中作業後に解錠して回収するところまで行います。担当者役は、番号を忘れた場合や、終了時刻を過ぎても中身が残っている場合の案内を試します。番号検索プレートを使える人と保管場所も決めます。
この流れは、管理者が端末を受け取り、あとで持ち主へ返す運用とは異なります。本人が端末へ触れたまま収納し、同じ人が取り出すことを基本にすると、集中時間の開始と終了を自分で切り替える運用にできます。
判断を分けるのは手元から離せるか
このロッカーを候補にできるのは、スマートフォンを使わない作業時間を先に決め、その間だけ端末を着席位置から届かない共用場所へ移せる職場です。端末が業務に必要で手元から離せない場合は、ロッカーを置いても今回の試行条件を作れません。
条件を満たすなら、15区画の形状とダイヤル錠を商品ページで確認する
と、参加人数と設置場所を具体化できます。
参考資料
- Brain Drain: The Mere Presence of One’s Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity — Adrian F. Ward, Kristen Duke, Ayelet Gneezy, Maarten W. Bos、Journal of the Association for Consumer Research、2017年
- モバイルロッカー 15人用 ダイヤル錠 商品ページ
— オフィスコム