地震対策として書庫を壁や床へ固定していても、オープン棚からファイルや書類が落ちる問題は残ります。固定済みの書庫へ追加する落下防止材を探しているなら、書庫の内寸、取付位置、日常の開閉方法を確認してからベルトを選びます。
この記事では、東京消防庁のハンドブックをもとに、書庫の転倒防止と収容物の落下防止を分けて考えます。そのうえで、内寸900mmまでのオープン書庫に対応する落下防止ベルト「イーガード EG-90S」が向く条件と、購入前に確認する点を整理します。
オフィスでは家具の転倒・落下・移動が実際に起きている
東京消防庁は東日本大震災後、東京都内の中高層建物にあるオフィスを調査しました。平成23年の調査では、回答した1,224オフィスの20%で家具類の転倒・落下・移動が発生しています。また、階層が高いほど家具類の移動が多くなる傾向も確認されました。
この調査が示すのは、東日本大震災時の東京都内における中高層オフィスの状況です。すべての地震や建物で同じ割合になるとは断定できません。ただし、オフィス内の家具と収容物が、負傷や避難の支障につながり得る問題として扱われていることは分かります。
書庫の固定と書類の落下防止は別々に考える
東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」は、書架・物品棚について次の対策を挙げています。
- 床・壁・天井へ固定する
- 上部をツナギ材で連結する場合は床固定を併用する
- 落下防止材を取り付ける
- 筋交いなどで補強する
ここで重要なのは、落下防止材だけですべての対策を済ませる考え方ではないことです。ベルトは棚の開口部から収容物が出るのを抑えるための部材であり、書庫自体を床や壁へ固定する部材ではありません。
今回の記事では、すでに建物や書庫に合った方法で転倒防止を行っているオープン書庫を対象にします。書庫が未固定なら、先に建物管理者、家具メーカー、施工業者へ固定方法を確認してください。壁や床の構造によって必要な施工が異なるためです。
今回の商品選定条件
公的資料の「落下防止材を取り付ける」という考え方を、購入前に確認できる条件へ置き換えます。今回の対象は、扉のないオープン書庫にファイルや書類を収めている事務所です。
選定条件は次のとおりです。
- 書庫自体の転倒防止は別に実施する
- 対象が扉のないオープン書庫である
- 書庫の内寸幅が900mm以内である
- ベルトと固定金具を付けられる位置が左右にある
- 付属するドリルビスを使う取付けの可否を確認できる
- 日常的に片手で開閉でき、閉め忘れを減らしやすい
- 複数段へ付ける場合は必要本数を段ごとに数えられる
「幅900mmの書庫」という呼び名だけでは決めません。同じ外寸幅でも、側板の厚さや内部構造によって内寸は変わります。収納部の左右内側を実測し、900mm以内か確認します。
条件に合う落下防止ベルト
イーガード 外付 EG-90Sは、内寸900mmまでのオープン書庫を取付可能物としている落下防止ベルトです。商品ページで確認できる主な仕様は次のとおりです。
- 品番: EG-90S
- 対応する収納: オープン書庫
- 対応内寸: 900mmまで
- ベルト: 幅25mm、厚さ1.3mm
- ベルト材質: ポリプロピレン
- 金具材質: スチール
- バックル材質: 樹脂
- 耐荷重: 約100kg
- 耐用年数: 約8~10年
- セット内容: 受け金具1個、バックル付きベルト1本、4×13mmのドリルビス4本
- 開閉方法: 左側のスライド式金具、またはワンタッチバックル
- 生産国: 日本
- 商品番号: TF-EG-90S
商品ページには、阪神・淡路大震災の震度7相当の加振試験をクリアした旨も記載されています。ただし、実際の地震動、書庫の固定状態、収容物の形状や置き方は設置場所ごとに異なります。この試験表示だけを根拠に、どの書庫でも書類が落ちないとは判断できません。
取付け前に書庫の内寸と側面を確認する
まず、ベルトを渡したい段の左右内側を測ります。内寸が900mmを超える場合はEG-90Sの対象外です。幅の呼び方ではなく、実際にベルトを取り付ける位置の寸法で判断してください。
次に、左右の側板を確認します。EG-90Sは外付タイプで、セットにはドリルビスが4本含まれます。購入前に、書庫メーカーへビス留めの可否を確認し、固定金具を付ける位置に配線、可動部、棚受けなどがないかを見ます。借用品やリース品、穴あけを禁止されている書庫には、そのまま取り付けられると考えないでください。
商品ページでは、書庫内側面に固定金具を付ける余裕がなく、粘着固定できないオープン書庫が取付可能物として案内されています。自分の書庫がこの条件に当てはまるか判断しにくい場合は、書庫と取付候補位置の写真、内寸、メーカーと型番を用意し、販売元へ確認すると行き違いを減らせます。
ベルトを付ける段を先に決める
EG-90Sのセット内容はベルト1本です。複数の棚段へ対策する場合は、どの段へ何本必要かを先に数えます。
東京消防庁のハンドブックでは、家具への収納方法として重い物を下に、軽い物を上に置く考え方も示されています。まず収納を見直し、重いファイルや箱を低い段へ移します。そのうえで、通路や座席側へ収容物が出るおそれのある開口部を洗い出し、ベルトを付ける段を決めます。
耐荷重約100kgという商品仕様を、棚板の積載可能重量や「100kg分の書類を必ず保持できる」という意味へ置き換えてはいけません。棚板の耐荷重は書庫側の仕様を確認し、収容物を詰め込みすぎないようにします。
開閉を日常動作に組み込めるか試す
落下防止ベルトは、収納物の出し入れ後に閉じて初めて開口部を横切る状態になります。EG-90Sは左側のスライド式金具とワンタッチバックルの2通りで開閉でき、商品ページでは書類を取り出しながら片手で開閉できると案内されています。
設置後は、書類を頻繁に使う人が無理なく開閉できるか確認します。開けたままになりやすい場合は、閉める担当者を決める、終業点検へ加えるなど、運用も必要です。ベルトの耐用年数は約8~10年とされているため、設置日を記録し、緩み、ほつれ、金具のがたつきも定期的に確認します。
穴を開ける前にベルトの位置を仮決めする
取付位置が低すぎるとファイル上部の動きを抑えにくく、高すぎると書類を出すたびに大きく開けることになります。ただし、適切な高さは収納物と書庫の形状で変わるため、一律の数値では決められません。
ドリルビスで固定する前に、紐などを左右へ仮に渡し、普段収納しているファイルが手前へ動いたときにどこへ当たるか、出し入れの邪魔にならないかを確認します。最終的な取付位置と施工方法は、EG-90Sの説明書および書庫メーカーの指示に従ってください。
使用頻度の高い書類はベルトを開けたままにしやすい
一日に何度も取り出すファイルの前へベルトを付けると、利用者が開閉を省略する可能性があります。使用頻度の低い保管書類と、日常的に参照する書類を同じ段へ詰め込まず、よく使う物は低い位置や別の扉付き収納へ移せないか検討します。
バックルを閉じる作業を個人の注意だけに任せず、終業時の書庫確認へ組み込みます。開けた人と閉める人が異なる共用書庫では、最後に確認する担当を明確にすることが必要です。
設置日と対象段を記録する
耐用年数は約8~10年とされているため、購入日だけでなく、実際に取り付けた日を記録します。同じ書庫へ時期をずらして複数本を追加すると、外観だけでは交換時期を区別しにくくなります。書庫番号、棚段、製品型番、設置日を一覧に残すと管理できます。
点検ではベルトの緩みやほつれだけでなく、金具のがたつき、バックルの破損、書庫側の変形も確認します。書類の入替えで高さや重量が変わった場合も、最初に決めた位置が引き続き合うか見直してください。
地震後はそのまま使い続けず状態を確認する
地震で収容物がベルトへ強く当たった可能性がある場合、見た目だけで継続使用を判断しません。書庫の固定部、ベルト、金具、ビス取付部を確認し、損傷や緩みがあれば使用を止めます。再使用や交換の判断は製品メーカー、書庫メーカー、施工担当者へ確認します。
落下防止ベルトだけが無事でも、書庫本体が移動したり固定部が傷んだりしていることがあります。書庫の転倒防止と収容物の落下防止を別々に点検することが重要です。EG-90Sは、固定済みのオープン書庫へ追加する対策として、内寸900mm以内かつビス留め可能な段に使用します。
ばらの紙や小物はベルトだけで保持しない
EG-90Sは棚の開口部へベルトを渡す構造です。ベルトより低い位置を通り抜ける物や、薄い紙を一枚ずつ保持する収納ではありません。ばらの書類、小冊子、文具などはファイルや収納箱へまとめ、その容器がベルトに当たる配置にします。
収納箱を使う場合も、ベルトがあることを理由に棚の手前へせり出させません。日常の出し入れで箱がベルトを押し続ける状態や、バックルを閉じるために収容物を押し込む状態なら、段内の収納量を見直します。ベルトの取付可否と、棚に置く物の形を分けて確認することで、対策後も通り抜ける収容物を残しにくくなります。