地震などでエレベーターに閉じ込められると、共用部の備蓄庫に水や簡易トイレがあっても取りに行けません。かご内へ防災キャビネットを置けば、救出を待つ間に必要な物をその場で取り出せます。
ただし、キャビネットは購入後に総務担当者だけで貼り付ける物ではありません。エレベーターの管理者や保守会社と設置可否を確認し、車いす利用や点検の支障にならない位置を決める必要があります。中身の期限管理も、通常は建物側の役割です。
この記事では、オフィスビルの総務・防災担当者へ向けて、薄型キャビネットの設置面、付属する備蓄品の数量、開け方と期限の管理を決める手順を説明します。
防災キャビネットで補う場面を決める
国土交通省は、長時間の閉じ込め時に救出を待てるよう、簡易トイレや非常用飲料水などを備えた防災キャビネットをかご内へ設置することを有効な対策として案内しています。
これは閉じ込めの発生を防ぐ装置ではなく、エレベーターの非常通報装置を置き換える物でもありません。閉じ込め時はインターホンなどで外部へ連絡し、キャビネットの用品を使いながら救出を待つ場面を想定します。
導入目的を「建物全体の備蓄を増やす」だけにせず、かごの外へ出られない間に必要な飲料水、簡易トイレ、照明、保温用品を置くことへ絞ります。オフィスの3日分備蓄や避難用品は、別の保管場所で引き続き管理してください。
建物管理者と保守会社へ設置可否を確認する
候補商品を決める前に、建物所有者・管理者、エレベーターの管理担当、保守会社へ計画を伝えます。テナントの総務担当者だけで位置や固定方法を決めないでください。
国土交通省の案内では、設置時の留意点として次の内容が挙げられています。
- かごの壁や床へ穴を開けない
- 保安上、容易に開けられない仕様にする
- 中身は原則として建物所有者・管理者が維持管理する
- キャビネットの問い合わせ先を明示する
- 車いす使用者の利用へ支障がないようにする
保守会社へは、商品資料、外寸、重量、固定方法、予定位置を提示します。かご壁面の材質、操作盤、非常通報装置、点検箇所との関係も確認し、設置後の定期検査で問題にならない方法を文書で残します。
500×85×680mmの模型で張り出しを確かめる
候補のエレベーターキャビネット フラット EFC-1PSは、幅500×奥行85×高さ680mmのスチール製で、本体重量は12kgです。
購入前に同じ外寸の段ボール模型を作り、設置候補の壁際へ保守会社立ち会いのもとで仮置きします。確認するのは、壁面に収まるかだけではありません。
- 出入口の通過と扉の開閉を妨げない
- 操作盤、インターホン、案内表示を隠さない
- 車いす使用者が乗降・操作する動作の支障にならない
- 荷物搬入や清掃、保守点検時に接触しない
- キャビネットの扉を開けて中身を取り出せる
奥行85mmは本体を閉じた状態の寸法です。扉を開く動作と、人が前にしゃがんで用品を取る範囲も試します。乗車定員や積載への影響は、商品重量だけから自己判断せず、対象エレベーターの管理者と保守会社の判断に従ってください。
固定テープは壁面を確認してから使う
商品ページでは固定テープが付属すると案内されています。一方、国土交通省はかごの壁や床へ穴を開けないよう求めています。
付属テープならどの壁にも貼れるとは限りません。壁面の仕上げ、テープの適合、必要な固定力、撤去時の影響、貼り付け作業者を、販売元と保守会社へ確認します。指定外のテープやねじを足したり、点検口へ重ねたりしないでください。
設置後は、本体の浮き、ずれ、扉のがたつきを建物側の点検項目へ加えます。異常があれば使用を続けず、周囲の安全を確保したうえで設置業者または保守会社へ連絡します。
付属品を最大乗車人数と照合する
EFC-1PSの商品ページで確認できる付属品は次のとおりです。
- 保存水500ml: 6本
- 非常用クッキー: 6袋
- アルミブランケット: 6枚
- 冷却バンダナ: 6枚
- ポケットティッシュ: 6個
- 紙コップ: 10個
- トイレシート: 10枚
- LEDランタン: 1個
- トイレットペーパー: 1個
- 非常用ホイッスル: 1個
- 消臭剤: 1本
- 吸盤付きクリップ: 2個
水は合計3Lです。6人分と表示されているとは限らないため、「六つある品目が多いから6人に足りる」とは決めません。対象エレベーターの最大乗車人数と、救出までに想定する時間を管理者・防災担当で確認し、各品目の必要数と付属数を照合します。
不足する場合は、空きへ追加できると推測せず、内寸と積載条件を販売元へ確認します。一台で必要量を収容できないときは、別容量のキャビネットを比較するか、建物の閉じ込め対策計画自体を見直してください。
開け方と連絡先を訓練で共有する
商品には、いたずらを防ぐためのボタンがあると案内されています。平常時に簡単に開けられないことと、緊急時に中の人が使えることの両方が必要です。
説明書に沿った開け方を管理担当者が確認し、かご内で分かる案内になっているかを見ます。独自の暗証手順や、外部の担当者に聞かなければ開けられない運用を追加しないでください。
訓練では人を閉じ込めたり、エレベーターを意図的に停止させたりしません。通常運転を妨げない時間に、次の内容を確認します。
- インターホンなどで外部へ連絡する位置
- キャビネットの開け方と中身の取り出し方
- 簡易トイレ、ランタン、保温用品の説明書
- 商品・設置・備蓄品に関する問い合わせ先
保守会社へ連絡する番号と、キャビネットや中身について問い合わせる番号は役割が異なります。表示を分け、組織変更や契約変更のたびに更新します。
箱の期限表示を管理台帳へ移す
商品ページでは、備蓄品は段ボールに収められ、外側に使用期限などが記載されると案内されています。キャビネットを設置したら、その表示を見えないままにせず、品名、数量、期限、点検日を管理台帳へ転記します。
水とクッキーは商品説明上10年保存、LEDランタンの電池も10年保存とされていますが、起算日を購入日と決めつけません。届いた現品の期限表示を正本にします。使用後や期限交換後は、一部だけ古い物が残らないよう品目ごとに台帳を更新してください。
点検日は、建物の防災訓練や共用備蓄の棚卸しと合わせると漏れを減らせます。点検では期限に加え、数量、包装の破損、液漏れ、本体固定、扉、緊急連絡先の表示を確認します。
開封後は一時使用停止から補充まで記録する
閉じ込め時に一部の用品を使った後は、残っている物だけで運用を再開しません。救出後に建物管理者がキャビネットを確認し、使用品、破損、汚れ、本体固定の状態を記録します。補充品の期限を現物で確認し、台帳と一致してから再び使用可能とします。
いたずらや誤開封があった場合も、単に扉を閉めるだけでは中身の不足を発見できません。開封を見つけた人の連絡先、保守会社へ報告する条件、補充を承認する担当を決めてください。問い合わせ先の表示が剥がれたり読めなくなったりした場合も、次の定期点検まで待たずに更新します。
エレベーターを更新・改修するときや保守契約が変わるときは、以前の設置承認をそのまま引き継がず、位置と固定方法を再確認します。備蓄品の管理だけでなく、かご側の条件変更を見直す機会を台帳へ含めることが、設置後の適合を保つ条件です。
設置承認と管理担当の両方が決まれば候補にする
管理者・保守会社が設置位置と固定方法を承認し、建物側で中身と期限を継続管理できるなら、EFC-1PSを候補にできます。車いす利用や操作・点検の支障を解消できない場合は、薄型でも設置せず別の閉じ込め対策を検討してください。