会社に救急箱は必要?50人用セットを人数だけで選ばない

会社に救急箱が必要か、何人用を選ぶか迷う総務・安全衛生担当者向けに、50人用セットの中身、事業場のリスクに合わせた配置、不足品、補充方法を解説します。

会社に救急箱は必要?50人用セットを人数だけで選ばない

会社に救急箱は必要なのか、必要なら何人用を選べばよいのか。備品担当になって初めて確認すると、「従業員50人なら50人用を一箱買えばよい」と考えたくなります。

しかし、人数表示は選定の入口にすぎません。事務所と倉庫では想定するけがが異なり、同じ50人でも一つの建物にいる場合と複数階へ分かれる場合では、必要な置き方も変わります。この記事では、50人程度の事業所を想定した救急箱を例に、中身、配置、補充方法から購入判断を組み立てます。

会社には救急用具の備え付けが求められる

労働安全衛生規則第633条では、事業者は負傷者の手当に必要な救急用具と材料を備え、置き場所と使用方法を労働者へ周知し、常時清潔に保つこととされています。

一方、以前の規則にあった具体的な品目の指定は削除されました。厚生労働省のQ&Aでは、リスクアセスメントの結果や、安全管理者、衛生管理者、産業医などの意見を踏まえ、事業場の実情に応じて品目を決めることが重要とされています。

したがって、「50人だから特定の50人用セットを置けば規則を満たす」とは判断できません。最初に、過去に起きたけが、作業で使う刃物や機械、やけどや薬品飛散の可能性、医療機関へ搬送するまでの動線を整理します。

人数より先に使用場所を分ける

従業員数だけで一箱の容量を決めると、必要なときに取りに行けない場所が生じます。まず、通常勤務時に人がいる場所を平面図へ書き出します。

たとえば、事務所30人、別棟の倉庫20人という職場では、合計だけを見れば50人です。ただし、事務所に一箱だけ置くと、倉庫から取りに行く間は応急手当用品を使えません。この場合は50人用一箱と決める前に、建物、階、施錠された区画、夜間に使う場所ごとに到達経路を確認します。

置き場所を仮決めしたら、普段その区画で働く人に歩いてもらい、扉や鍵を含めて救急箱へたどり着けるかを確かめます。全員が置き場所を知っていても、担当者しか鍵を持っていない収納庫では、緊急時の備えとして機能しません。

50人用セットの中身を想定するけがと照合する

災害多人数用救急箱N 50人用は、50人程度の事業所や自治会を想定した共用の応急処置セットです。販売ページに掲載されている主な内容は次のとおりです。

  • 傷口を覆う用品
    • ガーゼ10枚、滅菌タオル6個、アルミガーゼ18枚、救急絆創膏4個
  • 固定する用品
    • 三角巾20枚、伸縮包帯6個、粘着性伸縮包帯4個、副木に使う用品が大・中・小各2本
  • 処置を補助する用品
    • 清浄綿25枚、消毒液2本、止血帯2個、サージカルテープ3個
  • 道具と記録用品
    • ハサミ3本、ピンセット3本、メモ帳2冊、ボールペン3本

これは一人ずつに配る50組ではありません。たとえば三角巾は20枚、ハサミは3本であり、複数人で共用する構成です。商品名の人数表示だけではなく、同時に複数のけが人が出る場面と、日常的な小さなけがで消耗する頻度を分けて考えます。

デスクワーク中心なら紙やカッターによる切り傷、倉庫を併設するなら荷役や梱包作業で想定するけがというように、社内で起こり得る場面と内容物を一つずつ照合します。特殊な薬品や高温物を扱う職場では、この汎用セットだけで決めず、産業医などへ必要品を確認してください。

セットにない感染予防用品を別に確認する

厚生労働省の案内は、事業場で品目を検討する際、応急手当時の感染予防に必要なマスク、ビニール手袋、手指洗浄薬なども用意するよう示しています。

販売ページのセット内容には、マスクとビニール手袋の記載がありません。そのため、この商品を採用する場合は、職場で決めた手当の方法に照らし、感染予防用品を別に用意するか判断します。追加品をケースへ入れるなら、既存の内容物を押しつぶさず、品名と使用期限を見える状態で収納できるかも確認が必要です。

また、救急箱は医療機関への搬送を置き換えるものではありません。緊急性がある場合の通報、医療機関へ搬送する場合の連絡先、応急手当で対応する範囲を社内手順として決め、用品の使用方法と一緒に周知します。

ケースを置く棚は二つの寸法表記を確認する

販売ページでは、商品サイズが幅305×奥行500×高さ275mm、セット内容にあるアルミ製大型ケースが425×305×175mmと記載されています。向きを入れ替えただけでは一致しないため、幅430mmの棚へ入ると推測せず、購入前に完成状態の外寸を販売店へ確認してください。

掲載重量は約7kgです。棚板の耐荷重だけでなく、取り出す人が両手で持てる高さ、扉を開けたままケースを引き出せる奥行、前に荷物が置かれない位置を確保します。床や棚の奥へしまい込むのではなく、救急箱であることが離れた位置から分かり、通常勤務中に立ち入れる場所を選びます。

複数の場所へ分ける場合は、同じ内容の小型セットを置く方法と、中心となる一箱に消耗品を集約する方法があります。どちらにしても、「どこに何があるか」を掲示や社内マニュアルで一致させます。

使用後の補充まで担当を決める

セットを購入した日が管理の開始日です。内容物一覧を保管し、使用した人が数量を記録できるようにします。月次の備品点検など既存業務へ組み込み、封が開いている物、残数、表示された使用期限、汚れや破損を確認します。

消防庁の防災教材では、救急箱を同じ場所へ置き、使った薬やガーゼをすぐ補充し、年1回は古くなった物を交換するよう案内しています。職場では年1回を最低限の見直し機会としつつ、使用直後の補充を待たせない運用が必要です。

担当者が不在でも補充依頼を出せるよう、ケース内へ連絡方法を入れておきます。点検日だけ整っていても、使用後に欠品したままでは次の手当に使えません。

夜間や休日にも取り出せるか確認する

平日の日中に総務担当者がいる前提だけで置き場所を決めると、残業者、休日出勤者、倉庫の交代勤務者が使えない場合があります。勤務する時間帯ごとに、建物へ入れる範囲、施錠される扉、救急箱を知らせる担当者の有無を確認してください。

救急箱の場所は、口頭で一度伝えるだけでなく、社内の掲示、入社時の案内、緊急時手順へ同じ名称で記載します。棚の呼び方が「総務倉庫」と「備品室」で混在すると、別の場所だと誤解されます。配置を変えた場合は、箱だけを移さず、掲示と手順書も同時に更新します。

来客や外部作業者がいる事業所では、本人に探してもらうのではなく、社内の誰が取りに行き、誰が通報や誘導を担うかを決めます。用品の配置と緊急連絡の役割を一緒に訓練すると、一箱へ集約できる範囲を現実の動線から判断できます。

使用記録を品目の見直しにつなげる

使用した品名と補充の要否に加え、どの区画で必要になったかを記録します。同じ場所で特定の用品が繰り返し使われるなら、補充量を増やすだけでなく、けがの原因となる作業や設備を安全衛生の担当者へ共有します。救急箱は発生したけがへ対応する備えであり、事故を防ぐ対策の代わりではありません。

使用期限のある物は、期限切れを見つけてから注文するのではなく、交換予定を管理表へ入れます。開封後の扱いや交換時期が不明な用品は、表示や製造元の案内を確認します。中身だけを別製品へ入れ替えた場合も、名称、使用方法、期限が分かる状態を保ちます。

セットへ独自に品目を足すときは、担当者の判断だけで薬品類を詰め込まず、リスクアセスメントと産業医などの意見を踏まえて決めます。誰がどの範囲で使うか分からない用品は、箱に入っていても適切に使えません。品目、使用方法、連絡先を一緒に周知できることを追加の条件にしてください。

50人程度で一箱に集約できる場合の候補

50人程度が同じ区画で働き、想定するけがとセット内容が合い、不足する感染予防用品を別途補えるなら、この50人用セットを候補にできます。建物や階が分かれ、すぐ取りに行けない区画がある場合は、一箱の容量より配置を先に見直してください。

条件が合う場合は、災害多人数用救急箱N 50人用の商品ページで最新のセット内容を確認すると、現在の社内備品との差分を具体的に比較できます。

参考資料