会社の防災備蓄をデスク下へ置けば、倉庫が狭い事務所でも保管場所を分散できます。ただし、「1.5日分」と表示された個人用ボックスを1台ずつ置くだけでは、国が目安とする3日分の備蓄には届きません。
この記事では、内閣府の2026年1月改定ガイドラインをもとに、従業員1人あたりの必要量を確認します。そのうえで、デスク下用の「イナバ SONA M」を、共用備蓄と組み合わせて使う条件を整理します。
事業所の水は1人9L、主食は9食が3日分の目安
内閣府の「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」は、大規模地震で被災する可能性がある全事業者を対象に、事業所内で勤務する全従業員の備蓄量を示しています。
3日分の目安は、水が1人1日3Lで計9L、主食が1人1日3食で計9食、毛布が1人1枚です。このほか、簡易トイレ、衛生用品、携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池、救急医療薬品類なども例示されています。水と食料は賞味期限にも留意するよう記載されています。
たとえば、発災時に4人が勤務している事務所なら、従業員分だけで水36L、主食36食が計算上の目安です。
4人 × 水9L = 36L
4人 × 主食9食 = 36食
これは記事上の人数換算です。来客や出勤人数の変動、事業継続に必要な物資までは含みません。実際の備蓄数は、通常の在籍人数ではなく、発災時に施設内で待機する可能性がある人数から決めます。
1.5日分ボックスは3日分の半分を置く収納と考える
イナバ SONA Mは、商品名で「1.5日分」と案内されている個人用防災備蓄ボックスです。ここでいう商品は備蓄品を入れる収納であり、水や食料が付属する防災セットではありません。
3日分の基準に対して1.5日分は半分です。そのため、1人1台のSONA Mへ入る分だけを会社全体の備蓄とみなすのではなく、残りの1.5日分をどこへ置くかまで同時に決めます。
現実的な分け方は、個人用ボックスへ初動で取り出したい物を置き、残りを共用の備蓄庫へ置く方法です。たとえば、水、主食、簡易トイレなどを1.5日分ずつ個人用ボックスへ配り、もう1.5日分を部署単位で管理します。内容物の体積や重量は商品ごとに異なるため、購入前に実物の組み合わせが内寸と棚板耐荷重に収まるか確認が必要です。
今回の選定条件
デスク下へ個人用備蓄を置く方法が合うのは、次の条件を満たす事務所です。
- 従業員ごとに取り出せる備蓄を割り当てたい
- 共用備蓄だけでは保管場所や配布動線が足りない
- 1.5日分を個人用、残りを共用という管理ができる
- デスク下に幅250×奥行250×高さ605mmの本体を置ける
- 椅子の出入りや足元、避難動線を妨げない
- 収納物を棚板1枚あたり5kg以内に分けられる
- 定期点検と賞味期限の更新を担当者が管理できる
反対に、デスク下が狭い、車椅子利用者の足元空間を確保したい、フリーアドレスで使用者が固定されないといった職場では、席ごとの設置が適切とは限りません。共用備蓄庫や部署単位の分散収納も含めて比較します。
SONA Mで購入前に確認する仕様
オフィスコムの商品ページで確認できる主な仕様は次のとおりです。
- 外寸: 幅250×奥行250×高さ605mm
- 内寸: 幅247×奥行247×高さ587mm
- 材質: 塗装スチール
- 棚板: 可動棚2枚
- 棚板耐荷重: 1枚あたり5kg
- 付属品: 固定用ベルト、Sonaフック1個、棚板2枚
- 生産国: 日本
- 商品番号: INB-454902
- 組み立て: 現地組立品
本体は高さ605mmあるため、デスク天板の下に入るかだけでなく、幕板、配線ダクト、横梁、昇降機構との干渉も確認します。幅と奥行が収まっても、着座時の膝や足先に当たる位置なら使いにくくなります。
固定方法にも注意が必要です。商品ページでは、付属金具で固定できるデスクはイナバのデュエナシリーズに限ると案内されています。他のデスクで付属金具による固定ができるとは判断せず、固定用ベルトの使い方を含めて販売元へ確認してください。
中身は先に重量と使用順で割り振る
ボックスへ入れる前に、全従業員分の3日分を品目別に数えます。次に、個人用と共用へ分けます。個人用には、発災直後から各自が使う物や、配布に手間がかかる物を優先すると管理目的が明確になります。
水は特に重くなります。1人3日分の目安である9Lは、水だけでおおむね9kgです。SONA Mの棚板耐荷重は1枚あたり5kgなので、9Lすべてを1枚の棚へ載せる前提にはできません。容器を分ける場合も、棚板だけでなく本体全体の使い方について販売元へ確認します。
また、内寸へ入ることと、必要量を安全に収納できることは同じではありません。水、食料、簡易トイレ、衛生用品を候補どおりに並べ、収納後も無理なく取り出せるか試します。扉や荷物でふさがれる場所、地震時に家具が倒れて近づけなくなる場所は避けます。
個人用と共用の一覧を一つにまとめる
分散備蓄は取り出しやすい一方、所在と期限が分からなくなると不足を見落とします。管理表には、従業員名または席番号、個人用ボックスの内容、共用分の保管場所、数量、賞味期限、点検日をまとめます。
異動や席替えのたびに中身が置き去りにならないよう、所有者ではなく会社の備蓄であることも決めておきます。フリーアドレスの場合は個人名ではなく部署やエリアへ割り当てる方法が扱いやすいでしょう。
点検は賞味期限の確認だけでは足りません。固定部の緩み、扉の開閉、棚板の変形、足元や避難動線へのはみ出しも確認します。保管場所を分散するほど、点検対象の一覧化が重要になります。
1.5日分の水だけで約4.5kgになる
ガイドラインの1日3Lを基準にすると、1.5日分の水は一人約4.5Lです。水だけでおおむね4.5kgになるため、耐荷重5kgの棚板一枚へまとめると、容器やほかの物を載せる余裕はほとんどありません。
水をどの容器で何本入れるか決め、実重量を量ります。主食、簡易トイレ、ライトなども合わせ、棚板二枚と底部へどう分けるかを実物で試します。底部を含む本体全体の積載条件は、商品説明書または販売元へ確認してください。
一人分を三つの時間帯に分ける
可動棚二枚で内部を三つに分けられるなら、品目別だけでなく使用順で収納する方法があります。上段に発災直後に使うライトや衛生用品、中段に最初の食事と水、下段に後半分を置くなど、扉を開けたときに必要な物が分かる構成です。
ただし、食料と水だけで埋めると、簡易トイレや救急用品が入らなくなります。SONA Mへ入らない品目を「不要」とせず、共用備蓄のどこにあるかを扉内側の一覧で確認できるようにします。
席が無人でも会社の備蓄として使えるようにする
災害発生時に全員が自席にいるとは限りません。休暇や外出中の人のボックスを開けられず、在席者へ配布できない運用では、分散した備蓄を活かせません。個人名で管理しても、内容物は会社備蓄として必要時に再配分できるルールを決めます。
フリーアドレスでは、個人ではなくエリアや部署ごとに台数を割り当てます。ボックス数と最大在席人数が合っているかを点検し、席替えのたびに本体を移動しなくて済む配置にします。
期限更新は共用備蓄と同じ日に行う
個人用だけを各自点検にすると、期限や中身にばらつきが生じます。共用備蓄と同じ管理表へ登録し、同じ点検日に全台を開けます。期限の近い水や食料を入れ替える際は、箱ごとに不足が出ていないかも確認します。
点検時には固定ベルト、扉、棚板、足元への張り出しも見ます。収納物を更新して重量や形が変われば、以前と同じ棚位置が適切とは限りません。3日分の必要量を会社全体で確保したうえで、その半分程度を各席の初動用として分散するときに、SONA Mの細い形状を活かせます。
発災後に取り出せる配置かを訓練で確かめる
平常時にデスク下へ収まっていても、地震後に椅子や引き出しが動くと扉の前がふさがることがあります。収納場所を決めたら、机上から物が落ちた状態や停電を想定し、通路側から安全に近づいて扉を開けられるかを防災訓練で確認します。机の下へ潜り込まなければ開けられない向きは避けます。
また、備蓄ボックスが避難の妨げになった場合は、物資を取り出すことより退避を優先します。「各自の席にあるから各自が回収する」と固定せず、建物の安全確認後に管理担当者が配布へ切り替えられる手順も決めておきます。分散収納の目的は初動を早めることであり、危険な場所へ戻らせることではありません。
共用備蓄の不足を見えなくしない
個人用ボックスを導入すると、各席に物がある安心感から、会社全体の不足を見落としやすくなります。管理表では個人用と共用を別集計にせず、待機対象者へ渡せる総量と保管場所を一続きで追えるようにします。来客や外勤者の帰社を受け入れる職場では、固定席へ割り当てていない分も共用側で管理します。
担当者が不在でも確認できるよう、点検結果と鍵の要否、配布責任者の代行順を防災計画へ記載します。収納家具を置くことと、必要な物資を必要な人へ渡せることは別の課題です。
結論
SONA Mを候補にできるのは、デスク下から安全に取り出せ、個人用と共用を合わせて会社全体の備蓄を管理できる場合です。固定席がなく所在管理が難しい職場や、足元・避難動線を狭める職場では、部署単位の共用収納を優先します。
分散後も不足と期限を一元管理できるなら、固定方法と現行仕様を商品ページで確認してください。